ストレンジレットと呼ばれる物質は、「宇宙で最も恐ろしい物質」だと言われ、触れるだけですべてのものを自分と同じ物質に変えてしまうとされています。つまり、ストレンジレットに触れたものは、ストレンジレットになってしまうのです。
もし、ストレンジレットが宇宙空間を彷徨って地球にやってきたら…
地球も、地球上にある物質や動植物も皆、ストレンジレットに変化してしまいます。
当然、私たち人間も例外ではありません。
クォーク(素粒子)
ストレンジレットという物質を理解するために、まずはクォークについて簡単な説明をします。
素粒子は、自然界の物質を構成する、もっとも基本的な構成要素となりますが、いくつかのグループに分類することができます。そして、そのグループの一つに、クォークと呼ばれるものがあります。
世の中に存在しているあらゆる物質は、炭素や酸素、水素などの原子で出来ています。
その原子をさらに分解していくと陽子や中性子となり、それらは3つのクォークから出来ています。

クォークは全部で六種類あり、第一世代、第二世代、第三世代へと分けることができます。
最も左側に位置する第一世代が軽くて安定した状態ですが、第二世代、第三世代と右に行くほど質量が重く不安定な状態となっています。
不安定な第二世代や第三世代はすぐに壊れてしまい、第一世代のクォークへと変化してしまいます。そのため、陽子や中性子は第一世代のダウンクォークやアップクォークから形成されます。
陽子ならば、アップクォーク2つと、ダウンクォーク1つ。中性子ならば、アップクォーク1つと、ダウンクォーク2つ。

通常は、このように第一世代のクォークだけで構成されているので、何も問題が起こりません。
しかし、「宇宙で最も恐ろしい物質」と言われるストレンジレットは、第二世代のストレンジクォークがアップクォークやダウンクォークとほぼ同じ数だけ集まると形成されるとされています。
そして、このストレンジレットの特徴は、一度出来てしまうと陽子や中性子から構成されている原子核よりも安定していることです。
そのため、クォークの状態では不安定ですぐに壊れていたものが、ストレンジレットへと変化することで、安定した物質となるのです。
さらに、このストレンジレットは、より大きい方が安定した状態になると考えられています。
その場合、ストレンジレットは、触れた物質を、自身と同じ物質へと変化させて、より大きなストレンジレットとなってしまうのです。
つまり、ストレンジレットが地球へ触れてしまうと、人類どころか地球そのものが無くなってしまうのです。このような危険な物質は本当にあるのでしょうか?
実は、通常の状態では、このような危険な物質が自然的に発生することはありません。ストレンジレットを構成するために必要なストレンジクォークはすぐに消えてなくなってしまうからです。
しかし、仮説ではありますが、中性子星の内部ではストレンジレットが形成されていると考えられています。

中性子星
中性子星とは、そのほとんどが中性子から構成されている高密度の天体で、太陽のような恒星のうち、一部のものが晩年に迎える姿です。
太陽のような恒星は、非常に重く、自らの重力で収縮しようとする力が働いています。このとき、恒星の内部では水素原子による核融合反応が起こっており、収縮しようとする力を抑えています。
このときの核融合反応がエネルギーとなって私たちの地球にも届いていますが、一方で、核融合反応を起こした水素原子は、ヘリウム原子へと変換され燃料を失っていきます。
水素原子を失った恒星は、今度はヘリウムによる核融合反応を起こし、酸素や炭素に変換されていきますが、これも尽きてしまうと恒星はその一生を終えることとなります。
このとき、質量の大きな恒星は自らの重力を支えきれなくなり、超新星爆発を起こします。
そして、恒星の質量が太陽の2倍から3倍程度であれば中性子星となり、それ以上のものであればブラックホールとなってしまうのです。
これが恒星から中性子星へと変化する過程ですが、それはブラックホールが作られる仕組みと同じであり、違うのは質量だけです。
そのため、ブラックホールほどではないものの、中性子星も、とても重力が強く高密度な天体となっています。
中性子星の表面は通常の原子核や電子から生成されていますが、内部へと進むと、陽子と電子は圧縮され、そのほとんどが中性子となってしまいます。また、中心部では通常の物理法則とは逆転していて、クォークがバラバラの状態で安定して存在しています。
そのため、ストレンジクォークも存在し、アップクォークやダウンクォークと結びつくことで、ストレンジレットが生成されると考えられています。
ただし、中性子星の内部を調べることは非常に難しく、あくまでこれは仮説です。
しかし、本当に中性子星の内部でストレンジレットが作られていたらどうなるのでしょうか。
地球滅亡のシナリオ
もし、本当に中性子星の内部でストレンジレットが作られていた場合、中性子星同士の衝突などでストレンジレットが宇宙空間に放出されてしまう可能性もあります。
ストレンジレットは、それに触れた物質をすべて飲み込み自分と同じストレンジ物質に変えてしまいます。そのため、宇宙空間に放出されたストレンジレットがほんの少しでも地球に到達すると、それに触れた地球もストレンジレットへと変化してしまいます。
当然、地球上にあるすべての物質がストレンジレットへと変化し、私たち人間も例外ではありません。
あっという間に地球は滅亡してしまうでしょう。
ただし、本当にストレンジレットがあったとしても、地球に到達する前にプラスの電荷を持つという仮説もあります。
地球上の原子核はプラスの電荷を帯びているので、ストレンジレットもプラスの電荷を帯びることで、お互いに反発しあい、地球がストレンジレットに飲み込まれるのは避けられるという考え方です。
いずれにしても、すべては仮説です。
宇宙の誕生から100億年以上経過していますが、今のところストレンジ化した惑星は見つかっていません。
それほど心配することはないのかもしれません。
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